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SankeiBiz 8月2日(土)8時15分配信
銀行業界は7月にインターネットバンキングによる不正送金の被害に遭った企業に補償を行う方針を打ち出したが、補償の上限額設定など具体的な補償内容をめぐり、銀行ごとにばらつきが出る見通しとなった。みずほ銀行は1日、1企業当たり年間5000万円を上限とする補償方針を発表した。これに対し、業界内には上限額の一律設定を疑問視する声も出ている。
銀行業界はネットバンキングの不正送金で多額の被害を受けた個人に対しては、過失がなければ原則として全額補償している。これに対し、企業は「個人とは対応力が異なる」として、ほとんど補償していなかった。
しかし、今年に入り不正送金の被害に遭う企業が急増したため、全国銀行協会は7月17日、銀行が被害企業への補償に応じる条件として、ネットバンキングのパスワードを定期的に変更すること、「ウィンドウズXP」などサポートが終了したソフトを使わないことなど6項目を挙げた。これを受け、大半の大手行は補償に応じる方針を固めたもようだ。
みずほ銀行は、全銀協の指針に沿った補償方針を表明した。これについて、「決済インフラともいえるネットバンキングを顧客に安心して使ってもらうため」(担当者)と説明する。
上限額を設ける際に参考となるのが、2005年から企業への補償を打ち出しているりそなホールディングス傘下のりそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行の3行の例だ。専用ウイルス対策ソフトや使い捨てパスワードを導入していることなどを条件に年間最大5000万円を補償している。「平均取引金額を考慮した結果」(広報)としているが、損害保険でカバーできる範囲とみられる。
みずほ銀は、個別の被害状況に応じて5000万円の上限を超える補償をする可能性もあるというが、「自行での過去の被害額を考慮すると、5000万円なら十分カバーできる」(同)ことから上限額を決めたという。
地方銀行では、千葉銀行が今春、顧客企業に年間最大1000万円を補償する方針を決めた。広報担当者は「損害保険でカバーできるが、全銀協の指針を受けて1000万円が妥当か検討したい」と話す。
これに対し、三井住友銀行は「具体的な補償の内容は、セキュリティー対策の状況など被害の事情も異なることが想定されるため、個別に検討する」とコメント。三菱東京UFJ銀行も「個別案件ごとに総合的に検討する」としており、上限額を設けない可能性もある。
ある大手行幹部は「企業規模なども含め顧客企業の状況は全く異なる。保険でカバーできる範囲内で一律に上限を設けることが適切なのか、慎重に判断したい」と話した。