宇宙が3次元で誕生する様子を高エネルギー加速器研究機構と静岡大などの研究チームがシミュレーションで再現することに成功した。宇宙空間を「9次元」と考える最先端理論を使って、現実の3次元の世界が生まれる瞬間を初めてとらえた。宇宙論の発展につながる成果で、米物理学会誌電子版に来年1月4日に掲載される。
研究チームは、物質を構成する最小単位の素粒子は丸い粒ではなく、ひも状のものだと考える「超ひも理論」に基づき、約137億年前の宇宙誕生の様子を数値計算した。
超ひも理論はノーベル賞受賞者の南部陽一郎氏らが約40年前に提唱した「ひも理論」を発展させたもので、物質や宇宙の根源的な謎を説明する理論として広く支持されている。しかし超ひも理論は宇宙を「9次元の空間と時間」で定義しており、現実の3次元の空間とどう結びつけるかが長年の課題だった。
研究チームは、時間の経過に伴い宇宙空間がどう変化するかを探る新手法を開発し、スーパーコンピューターで解析。その結果、初期は非常に小さい9次元の空間だったが、あるとき3つの方向だけが自然に急拡大し、膨張し始めることを発見した。これが3次元の宇宙誕生の瞬間という。
残る6次元は現在も小さい状態のままで収まっており、人間は感じることさえできない。同機構の西村淳准教授は「超ひも理論を現実の空間と結びつけられたことで、宇宙の始まりから終わりまでの理解に弾みがつく」と話している。