らんちゅう
(2010-10-22 04:51:05)
下一个
らんちゅうの話の続き。
家には大きならんちゅうが一匹いる。水槽で飼っていて、父が世話をしている。近所にらんちゅうの愛好家がいるのだが、年を取って世話が大変になったのと、庭に娘さんの家を建てるので、数を減らそうとあちこちに分けていた。それを父が貰ってきたのだ。大人のらんちゅうを5、6匹貰ってきたのだが、次々と死んでしまって、とうとう一匹になってしまった。
正直言って私はらんちゅうより流線型の普通の金魚の方が好きだ。らんちゅうの頭のコブがなんとも格好がよくない。尾っぽと泳ぎ方はきれいだけど。普通の金魚は、すっすっとまっすぐ泳ぐ。スピードがある。機敏である。だからゆっくり観賞できない。らんちゅうはのろのろしている。ゆったり優雅に泳ぐ。敵から逃げることなんか、はなから考えにないみたいだ。だからゆっくり観賞できる。でもやっぱり全体のバランスはそう美しいとも思えないので、らんちゅうの何がよくて愛好家たちはあんなに熱心になるのだろう、と思っていた。
ところが、先日、名古屋の公園で見たらんちゅうたちは、とても美しかった。それはきっと公園のらんちゅうたちが選りすぐりのらんちゅうたちだったからだろう。
ご近所の愛好家は、稚魚を何百匹と生やす。稚魚は真っ黑で、庭にしつらえた四角いプラスチックの池に十把ひとからげに詰め込まれている。黑い稚魚たちは大きくなるにつれて赤く色づき、それぞれ模様の出方が異なってきたり、ヒレや体の形が異なったり、だんだんと個性が出てくる。そういう見極めがつくようになると、いいらんちゅうだけを選別して残していくんだそうだ。
「じゃあ、いいらんちゅうになるかどうかっていうのは、たまたまいい模様や色や形が出るかってことで、全くの运ってことなんだね?」
「何百匹、何千匹と飼って、その中からいいものが出てくるのを期待して待つんだね?」
むろん全くの偶然だけではなくて血筋があるのだろうけれど。
先日見たらんちゅうたちは、そういう何万匹、何億匹の中から選びぬかれた精鋭たちだったのだ。私には前頭と大関の違いはわからなかったけれど、どのらんちゅうもとても美しく気品があるということだけはわかった。
もうひとつ、気がついたことがある。私はいつも家のらんちゅうを水槽の横から見ているのだけれど、品評会ではらんちゅうたちは白いホーローの洗面器に入れられて、人の腰より低い位置に並べられていた。鑑賞者は真上かららんちゅうを眺める。真上から眺めるらんちゅうは、横から眺めるよりずっと美しい。らんちゅうは観賞の仕方までそのように定められて作られているらしい。