暑いですね。
この暑さが今年の夏のピークであることを祈ります。
最近は夏に若者が海に行かなくなった、とテレビで言っていました。若者ではない私はましてや、海より山の方が好きです。青々とした緑の連なり、さらさらと吹き抜ける風、清らかで冷たい滝の水しぶき、夏に訪れるならだんぜん高原です。
先日の旅行は、中学生が1名、小学生が2名、幼稚園生が1名いたので、寄ったのは水遊び公園やら牧場やら皆同じような場所で、連れて行かれた私は、どこがどこだか名前もよく覚えていません。うだるような暑さの中、大人たちは風の通る木陰にシートを敷いて、時々戻ってくる子供たちの基地となっていました。
そういう子供向けの場所を除けば、印象的だったのは
“オオムラサキセンター”でした。
山梨県の北杜市、八ヶ岳高原にあります。日本の国蝶“オオムラサキ”を研究、保護している施設です。
ちょうどオオムラサキが羽化する時期だというので寄ったのですが、日も高かったので、まさか羽化の瞬間を目にできるとは期待していませんでした。セミの羽化のように蝶も朝早くしか羽化しないものだと思っていたので。ところが、センター内の金網に囲まれたオオムラサキ観察区域の中で、私たちは幸运にも羽化の瞬間を目にすることができたのです。
入り口を入ってすぐの観察樹にオオムラサキのさなぎがいくつもぶら下がっていました。オオムラサキのさなぎは、緑がかった白い葉っぱが数枚重なっているかのように見えました。職員の方が、
「このさなぎはあと10分くらいで、羽化しますよ。」
と言うので、私たちはそこで待つことにしました。
15分くらい待って、羽化が始まりました。私は特に昆虫が好きとか興味があるとかいうわけではないのですが、それでも、さなぎの背中が割れて蝶が少しずつ姿を現し殻を脱ぎきって羽を伸ばしていくその一連の様子の美しさには、感動せざるを得ませんでした。
よく少女が短期間に美しい大人の女性に変化する変わり様を、“さなぎが蝶になったかのよう”と表現するけれど、“変身~メタモルフォーゼ~”に対する人間の願望や羨望がそれを何か特別なことと捉え、木にぶら下がっているだけのつまらないさなぎから自由な空に舞い上がることのできる羽を持った蝶が生まれ出得ること、人から見れば在り難いその突然の変化に、人は自分自身のイマジネーションを重ねて心を突き動かされるのかもしれません。しかし蝶にとっては、実はそれは突然の変化でも何でもなく、そのような姿になるべくしてなる要素を元々己の身のうちに抱えて生まれてくるのだろうと思います。
続く。