2008 (142)
2009 (130)
2010 (94)
2011 (140)
17歳の少年が母親を殺害し、その首を抱えて警察に出頭した。
それを「異常だ」と一言で片付けてしまうこともできるけど、家庭の事情や彼自身の経歴や心の内を知るよしもないけれど、それでも想像してしまう。彼が一線を踏み越えて狂気の世界に踏み込んでしまうまでの道のりを。
以前小学6年生の少女が同級生を刺殺した事件で彼女がネットに書いていた日記や、酒鬼薔薇聖斗事件で少年が書いた文章を読むと、彼らが狂気と正常の狭間で揺れ動き、自身の狂気への傾倒に恐れおののいてる姿が見えてくる。なんとか正常な世界に留まりたいと願いつつ狂気に引きずり込まれていく自分を、彼らは感じていたんじゃないだろうか。狂気と正常の境目は一本の線に過ぎない。そこを越えるか越えないか。たった一歩、踏み出すだけで、もう日常は消えてしまう。
その線からずっと離れて一生近寄ることなく日常の世界の側に安泰する多くの人々がいる。しかし、その線ぎりぎりのところで、危うい日常生活をどうにか送ってる人達もいる。線のずっとこちらにいる者にとっては、数歩右に行こうが左に揺れ動こうが、それは同じ風景の世界だが、線ぎりぎりの場所に立っている彼らのたった一歩隣には狂気と混沌の世界が口を開けて待っている。彼らにとっては毎日の一歩一歩が、線のこちら側に踏みとどまるための危うい綱渡りであるのかもしれない。
彼らが線を踏み越えてしまうその前に、手を取ってこちら側に引き寄せてあげることのできる誰かがそばにいたらよかったのにと思う。